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第7話 泡沫の幸せ(1)

작가: 酔夫人
last update 게시일: 2026-05-22 11:01:43

それから始まった蜜月期と呼ばれる時間をサラリアはほとんどラーシュの腕の中で過ごした。

朝、目を覚ませば隣にラーシュがいる。

食事をしていても抱き寄せられる。

夜になれば当然のようにラーシュはサラリアを抱いた。

竜族は体温が高く、ラーシュに抱き込まれるたびぽかぽかと温かくて安心したが―――問題があった。

竜族と人族では体力が違いすぎた。

ラーシュは加減していると言っていたが、それでもサラリアは毎夜抱き潰されて気絶するように眠りについていた。

「ラーシュ、休憩……お願い……」

半泣きで縋っても効果はない。

ラーシュは未練がましい振りをしてサラリアの髪へ顔を埋め、サラリアを大きな押し潰しながら感じる部分を刺激してくる。

「やあ……んぅっ」

刺激に耐えれずサラリアが甘い声をあげれば、勝利を確信するかのように笑ってみせて「あと少しだけ」と強請る始末。

「さっきも、そう言った……ひあっ!」

「サラが可愛すぎるのが悪い」

真顔で言うから余計に腹が立った。

こんな夜が何度も訪れ、空腹を訴えているのに誤魔化されながら抱かれ続け、そのまま食事を逃して朝を迎えたとき「流石にひどい」とサラリアは怒った。

サラリアは本気で数日お預けにしてやろうかと思った。

このときはラーシュも流石にまずいと思ったのだろう、なんでも一つ言うことを聞くから許してほしいと訴えてきた。

項垂れるラーシュに結局絆されてしまった。

いや、絆されたというのは正確ではない。

体力差と加減が問題なのであって、ラーシュに抱かれること自体は嫌ではなかった。だからサラリアも交換条件に前向きだった。

「読書がしたい」

「そんなことでいいのか?」

意外そうに目を瞬かせるラーシュにサラリアは頷いた。

すると翌日には宮殿の一室が図書室に変わっていた。

天井まで届く本棚には革張りの本がずらりと並ぶ。

古い巻物もあった。

ドラコニアの歴史書、竜族の神話、地上で流行している小説から服飾店のカタログまで。たくさんの種類の本にサラリアは夢中になった。

サラリアが喜んだことをラーシュは嬉しがってくれたが、次第にラーシュは不満そうな顔をするようになった。

本を読んでいると抱きついてくる。

膝へ頭を乗せることもあれば、ページをめくる指へ唇を寄せてくる。

「……ラーシュ、読めない」

「本ばかり見ているから」

「読書していいって言ったじゃない」

「そんなに夢中になるとは思わなかった」

本気で拗ねているラーシュにサラリアは吹き出した。

冷たいと感じるほど完成された美貌が膨れて台無しだった。

.

使用人に対しては常に無表情で、綺麗だからこそ近寄りがたさを感じるラーシュ。

でも、サラリアと過ごすときのラーシュは驚くほど感情豊かな男だった。

竜族は人間と違って長命なので、ラーシュは見た目だけはサラリアと同年代だが実年齢は遥かに上。

それなのに時折サラリアが子どもっぽいと感じるような表情も見せた。

拗ねる。

甘える

嫉妬する。

いつだったか、笑うラーシュに言ったことがある。

「ラーシュって意外とよく笑うのね」

するとラーシュは少し驚いたように目を瞬かせ、それから目を細くして優しく笑った。

「サラがよく笑っているからだ」

サラリアが笑うから嬉しくなって笑うだけ。ラーシュの言葉はサラリアを驚かせた。

「自分が笑っているなんて信じられない」

地上では笑っていたがそれは義務で、心のうちはいつも冷めていた。

笑顔は仮面でしかなかったのに、ラーシュの傍では意識もせずに自然と笑っていた。

空を飛ぶ竜を見て笑い、ラーシュの拗ねた顔に笑い、本を読みながら笑う。そんな自分をサラリアは知らなかった。

ラーシュはサラリアの頬へ触れて小さく笑った。

「俺もだ」

まるで孤独だった過去を静かに溶かしていくみたいに、その声音はどこまでも優しかった。

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